ふと思い立って、冷蔵庫をのぞいたとき。そこにあったのは乾いたままの車麩。派手さはないけれど、使い方ひとつで心まであたたまる一皿になる――そんなことを思いながら、この日は「車麩の角煮風」を作りました。
肉を使わずとも、車麩のふくよかな食感と甘辛い味つけで、どこか懐かしく、そして満足感のある一品になります。ご飯にもよく合いますし、冷めても美味しく、翌日には味がさらに染みて、また違った表情を見せてくれる。
こういう料理が、台所にあると、なんだか安心します。
レシピ
〈材料(2〜3人分)〉
・車麩 4枚
・だし汁 300ml(昆布と干し椎茸でとったものがおすすめ)
・醤油 大さじ2
・みりん 大さじ2
・酒 大さじ1
・砂糖 大さじ1(お好みで調整)
・生姜の薄切り 数枚
・片栗粉 適量
・ごま油 少々
〈作り方〉
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車麩はぬるま湯に20分ほど浸して戻し、両手で軽く絞って水気を切る。
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食べやすい大きさにカットし、全体に片栗粉をまぶす。
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フライパンにごま油を熱し、車麩を両面こんがり焼く。
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焼き色がついたら、だし汁・調味料・生姜を加え、弱火〜中火で10〜15分ほど煮る。
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汁気がほどよく残る程度まで煮詰めたら火を止めて、そのまま少し冷ますと味が染みやすい。
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お好みで青菜を添えたり、辛子を添えても美味しい。
この料理を「角煮風」と呼ぶのには、ちょっとした遊び心があります。動物性の食材を一切使わない精進料理でありながら、見た目にも食感にも満足感がある。そのことに、私はいつも少し驚き、そして感動します。
乾物は、時間と手間をかけることで本来の力を取り戻す食材です。車麩も、じっくり戻して、ゆっくり味を染み込ませていくことで、まるで長い眠りから覚めたかのように、ふっくらとした滋味を帯びてくる。その様子が、まるで人の心と似ているように感じるのです。焦らず、騒がず、ただ静かに、味わいを深めていく姿は、まさに禅の姿そのものです。
まとめ
禅の世界には、「無事是貴人(ぶじこれきにん)」という言葉があります。特別なことを求めず、平穏無事に日々を送る人こそ、真に尊いという意味です。
派手なごちそうではないけれど、手のひらで戻した車麩に、じんわりと染み入る味を感じながら食事をすること。それは、忙しさにかき消されがちな自分の心と向き合う、貴重な時間になるかもしれません。
静けさの中にある豊かさ。見た目には地味でも、ひとくち食べるごとに心に染みわたる「車麩の角煮風」は、日常の中で禅の教えをそっと思い出させてくれる一品です。次にこの料理を作るときは、ぜひ湯気の立ちのぼる鍋の前で、少しだけ深呼吸をしてみてください。静かな満足感が、そっと胸に広がるはずです。
茗荷とほうれん草と挟んで食べるとよりおいしくいただけます!!
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